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研究 History
 レーザ加工研究のきっかけは、YAGレーザの基本波では本来加工できない石英ガラスに3次元加工を施したことです。常識に囚われず、材料とレーザの特性をよく理解すれば、これまでにない新しい技術が生まれてくることを経験しました。ただ、その時代にニーズがなく、この研究の評価はゼロに等しかったと記憶しています。指導教官の小林昭先生からは、当時、メンデルの話を伺ったことを鮮明に記憶しています。メンデルは研究を発表した当時、誰からも理解されず評価はゼロだったとのこと。ところが発表から34年経って時代が進み、メンデルの研究は遺伝分野の第一級の発見と再評価されることになったそうです。小林先生のメッセージは、「誰も知られていない真理を発見し、不可能を可能に変えることこそ研究」ということでした。ガラス内部の3次元穴あけを発表してから30年経ったころ、ガラス内3次元導波路が注目され、超短パルスレーザによるガラスの3次元加工が盛んに研究されるようになりました。小林先生には、研究そのものについて大事なことを教えて頂きました。
 15年前からは半導体ウエハやガラスなどを剥離させる「レーザスライシング」に着手しました。最近は、山田准教授が精力的にこの研究を進めており、実用化が見えてきました。今後も研究室では、時代の一歩先行く新加工技術の開発を心がけています。
 1960年にメイマンが発振に成功したレーザ光線は、用途があって生み出されたモノではありません。しかし、その可能性の大きさから、用途は無限であり、研究者は自由に利用することができます。大学で行う先進研究の道具として相応しいものだと思っています。

 砥粒加工研究のきっかけは、河西名誉教授の精密研磨加工研究です。従来、職人技だった高度な研磨技能を、幾何学的に解析し、新たな精密研磨技術を装置とともに開発しました。とくに結晶材料の研磨では、光通信の実用化に大きく貢献し、その業績は高く評価されています。現在、砥粒加工学会名誉会員になられています。
 研究室では池野教授が砥粒加工研究を引き継いでいます。博士研究でメカノケミカル作用を利用した鏡面研削砥石の開発をして、今までにさまざまな鏡面創成技術を開発しています。研磨は表面科学の領域であり、物理化学現象の究明とその利用が重要です。これに加えて、職人技がものをいう興味深い領域でもあります。最近はSiCの表面を科学することで、砥粒なしでも数百μm/hの能率で鏡面研磨できる方法を開発しています。また、人類最古の研磨工具である天然砥石や、最古の金属加工品である古代青銅鏡から、先人の知恵を学ぶことも多く、研究の世界が広がっています。



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研究設備・施設紹介
 研究室の研究施設・設備について紹介します。実験研究者にとって施設や設備はとても重要なものです。なぜならば、個々人のアイデアが理にかなっているかどうかを実証できるからです。

 しかし、もっと大事な理由があります。それは未知の新しい世界に研究者を導いてくれるということです。例えば、実験を進めていく中で偶然ですが全く予想外の不思議な現象に出会うことがあります。最初、これらの現象は研究者の予想を否定するものであり、厄介な存在に過ぎません。ここで研究者の種類は二手に別れます。がっかりして「やーめた。」と放棄するか、興奮して「どうして?!」と夢中になるかの二手です。後者は”不都合な現象”を解明して行きます。そのうち、当初自分の予想していたことが完全に間違っていたことに気づかされ、自然界の厳しさを知ることになります。しかし、自然界に赤裸になって真正面から取り組んでくる研究者を自然界は見放さないように思います。厳しさを知る頃には、だめではない何かを掴んでいて、誰も気づかなかった新世界に飛び込んでいるのです。
 自然界には人の知らない世界がまだ沢山あります。科学の領域は自然界の氷山の一角に過ぎません。研究設備を用いた実験する中で偶然見つけた「種」は、研究者の好奇心という「水」で芽吹き、創造力という「肥料」で育ち、やがて独創研究という大輪の花を咲かせるのです。その花からこぼれ落ちた種は、その研究室でまた新たな独創研究を生み出していきます。研究室は代を繋いで伝統を築いて行くことが、人材育成の面からも大事だと感じています。
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研究分野と研究テーマ

研究分野: 精密・微細加工分野
 半導体結晶材料、ガラス、サファイアなど先端材料には、硬くて脆い材料(=硬脆材料)が多くあります。生産加工技術(工業界で求められる加工技術)では、能率良く、精密に、変質なく、微細な領域でも高品位に加工することが求められます。硬くて刃が立たない材料をどうしたら加工できるか、日々、材料と対峙して新しい原理に基づく革新的加工技術の開発を目指しています。主に穴あけ、切断、研削、研磨、接合、変形、改質などの加工研究を行っています。

 IoTやAIなどは、道具として有益です。我々もどんどん取り入れて行きます。これらは既存の加工技術を整理して秩序立てて組み合わせることで、どこまで目標に効率よく接近できるかという生産システムに有益です。現在分かっている知見を最大限効果的に利用することができ、重宝なモノだと思います。

 一方で、大学はまだ世界に知られていない原理やコンセプトを生み出す使命があります。物理化学現象に基づく新たな加工原理・コンセプトの開発研究に主眼をおいた基礎研究には実験研究が欠かせません。そのため実験室には最新の加工装置、評価装置を整備するように心がけています。また、加工が実現したら本当に自分たちの狙いどおりの原理・コンセプトで実現できたのか、徹底的に検証することも大事にしています。

 以上のような研究スタイルは、いつまでに原理を発見・発明できるのか保障することはできません。だからこそ、大学が担うべき研究だと思うのです。案外、先が見えないと思われる研究も、洞察力を働かせて実験結果と真摯に対峙すれば案外容易に先が拓けると思っています。是非、学生にもその体験をさせたいと思っています。

江崎玲於奈博士によると、解析や理論は「分別研究」とされ、工学研究の多くがこれに属します。世の中には、実験による発見を基にした「創造研究」というものがあり、唯一無二の新技術、新知見を生み出しているそうです。

2024年度 研究テーマ

 レーザ加工
1)レーザエッチング
2)ダイヤモンドのレーザスライシング
3)各種半導体結晶材料のレーザスライシング
4)フッ化カルシウムのレーザスライシング
 砥粒加工
1)SiCの砥粒レス高速鏡面研磨
2)GaNの摩擦特性
3)半導体結晶材料のメカノケミカルポリシング
4) セラミックスの研磨
5)古代青銅鏡の研磨関する研究
6)研磨炭の研究
その他
 1)残留応力と加工の関係
 2)エッチングによる半導体結晶材料の高速研磨加工




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