| 設置の社会的背景 初代委員長の小林 昭先生は,1982年に学問「生産原論」を提唱されました.大量生産,大量消費といった欲望の資本主義社会の只中にあって,モノづくりのあり方に危機感を抱き,「Principle」の必要性を強く感じたからでした。 1993年,精密工学会内に当専門委員会が設置されました.Principleを追求し,新たな知見を産業界の技術者と共有するとともに,次世代の技術者教育に反映させることが期待されました.文科省が「技術者倫理」の必要性を認識する遙か以前に,精密工学会がこの重要性を認め,学会内で研究を重ね、工学教育に役立てていたことは特筆すべきことでした. |
| 活動目的(会則より抜粋) 『本専門委員会では「真に人間生活の豊かさをもたらすためのモノ」を明らかにし,「モノづくり」の本質を追究しようとするものである.生産技術史・先端生産技術・生産哲学・生産と人間などの分野を対象として,それぞれ深く研究するとともに,相互交流を図り,世界に例の見ない「生産原論」の確立を目指したい.本活動成果を通じ,日本から発進できる新しい理念を構築し,人間生活と社会に寄与し,あわせて精密工学会の発展に寄与することを目的とする.』 |
![]() 生産原論の体系図 |
| 各部会の紹介 生産技術史部会:モノづくりの本質を知るには「温故知新」が大切どと思っています。現在の最先端技術がどのような社会背景(時代のニーズ)で生まれ、どのように発展(進化、深化)してきたのかを知ることで、その技術の本質が見えてくると思っています。技術の誕生には社会と切り離せない関係性があります。技術の発展を丁寧に調査することで、先人の知恵を学ぶことができます。技術史を辿れば、今にも途絶えそうな技術が技能の中に埋もれていたり、すでに消えてしまった技術のあることもわかります。これらが発展して現代技術になっているものもありますが、全く異なる考えに基づく技術に入れ替わってしまったものもあります。現代ならば周辺技術も発達しており、過去に途絶えてしまった技術の方がもっと発展し優れた技術が生み出される可能性もあります。当部会では、石器や青銅器、大工道具などの歴史を探り、文献だけでなく疑問や課題が見つかれば再現実験を行って先人の知恵を発見することにも注力しています。さらに、歴史を学ぶ意義として、将来を正しく展望することも含まれます。先端技術の今だけを眺めるのではなく、過去の姿を見つけることでその技術のベクトルを捉え、将来へと導くことも重要なことだと認識しています。 生産哲学・倫理部会:モノづくりの始めは,How toではなく、生産哲学,生産倫理から考えることが重要です。生活を守る、生活を豊かにする、宇宙地球環境・資源を守るという考えの下に、生命権,生活権、環境権、平和維持権を確保しなければなりません。そのために何をつくるべきか、つくらざるべきモノは何かについて生産哲学と倫理を基に生産原論専門委員会内で議論を重ねています。これには東洋的精神文明を取り入れたモノに対する評価、モノづくりの基本を認識し、社会生活・活動規範に至る広範囲な思索が重要です。 2015年9月の国連サミットでSDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))が採択されました。国連加盟193ヶ国が2016年から2030年の15年間で達成する目標として掲げられた17目標中、「産業と技術革新の基盤をつくろう」は技術者の責務です。さらに「住み続けられるまちづくりを」、「つくる責任、つかう責任」、また「気候変動」対策、「海の豊かさ」、「陸の豊かさ」を守ろう、についても当部会で議論されていることです。持続可能なモノづくりを議論するには、企業の意見が必要です。是非、法人会員となって企業人が議論に加わって頂ければと願っています。情報化・デジタル社会が急激に発展した現代では、生産のあり方も変わりつつあります。同時に、これらの技術におけるリテラシーを新たに構築する必要が出てきました。生産哲学・倫理は時代の変革に伴って新たな課題が生まれ、その都度、丁寧な議論が求められる分野だと思います。 生産と人間部会:モノづくりは、人類が誕生して以来続く、人の営み(本能)だと言えます。技術は人から生まれ人によって発展していきます。偶然の出来事(失敗含む)から人は新技術の発明や新科学の発見をすることがあります。その発見や発明は、誰でもできるというものではなく、準備された特定の人にだけなせる技であることをパスツールも証言しています。誰もが観ているものから誰も思いつかないことを考える人が新たな技術や科学を切り拓いていくのです。そのような人はどんな準備をしているのでしょうか。どんな感性を研いているのでしょうか。新技術開発では、人をよく知ることの重要のようです。当部会では、生産と人間の関わりについて様々な視点から調査研究をしています。技術伝承では技能も含めてものづくり教育や技術者養成の実体を企業訪問したり、感性の育成の磨き方、職人技の解析などがあります。 先端生産技術部会:上記3部会は、将来の優れた技術開発を幅広い視点から推し進めていくことを最終目標としています。当部会は、最先端技術を紹介し、上記部会と連携して将来技術を展望することを試みています。また、そこからヒントを得て行った生産原論研究の発表の場となっています。後者の事例として、京都特産の仕上げ砥を科学研究し、世界一と称される合砥(あわせど)の本質を突き止め、人工の仕上げ砥石が発表されました。これは半導体結晶材料の鏡面研削にも適用が可能でした。また、従来から半導体結晶材料やガラスなどの硬脆材料の切断には、ワイヤーソーや薄刃の切断砥石が使用されてきました。ウエハ状に薄く切断する場合、高価な素材を切りくずとして半分以上廃棄してしまうことが現代では問題になっています。切りくずゼロで切断することは,加工技術者の長年の夢でした。そこで、当部会ではレーザを材料内部に侵入させて、材料を剥離できることを突き止め、ウエハ製造やレンズ製造への適用を検討しています。部会では、自然から学ぶ、異分野や過去からの技術移転(トランスファ・エンジニアリング)の発想方法を実践し先端生産技術開発に取り組んでいます。 |
| 活動紹介 紹介プレゼン資料2024年 精密工学会誌 91-10、pp.965-969(2025)専門委員会紹介記事 ・行事予定 1月 総会・特別講演会 3月 春季大会OS 5月〜6月 第1回研究会 生産技術史部会企画 8月 第2回研究会 先端生産技術部会企画 9月 秋季大会OS 10月 第3回研究会 生産哲学・倫理部会企画 12月 第4回研究会 生産と人間部会企画 ※他にも会員なら無料で参加できる同好会や互換共催イベントが随時あります。 |
| 会員 個人会員(5千円/年)、法人会員(3万円/年) 入会:随時受付中 ※2025年10月30日・・・・個人会員23名、法人会員0社 歴代委員長 初代:小林 昭、 2代目:河西敏雄、 3代目:伊藤昌樹、 4代目(現):池野順一 小林 昭(1921年〜2000年) 1943年東京帝国大学工学部造兵学科卒 1948年〜1969年 逓信省電気試験所 1969年〜1980年 東京芝浦電気株式会社 1980年〜1987年 埼玉大学工学部機械工学科教授 1987年〜1990年 茨城職業訓練短期大学校 現理事メンバー紹介 こちらから → |